ヨウ

アメリカン・ビューティーのヨウのレビュー・感想・評価

アメリカン・ビューティー(1999年製作の映画)
4.8
これは凄い映画だった。どこかおかしいファミリーストーリー。各人が自己構築に目覚めていくのと同時に狂い始める歯車。官能と狂気の渦の中から生み出される衝撃的な展開。張り詰めた思いが曝け出される時、大きな脱力感に襲われてしまった。上辺を取り繕った人物たちによって繰り広げられるストーリー展開に脱帽である。登場人物一人一人に人間臭い一面が秘められており、それらが織りなす精緻なエピソードに美が見出される。皆が自己を開示すればするほど事態は思いがけない方向へ進んでいく。どうしようもない緊迫した状況下で見え隠れする愛、哀しみ、寂しさを肌で感じ、筆舌に尽くしがたい思いに駆られた。鑑賞後には不思議と打ちひしがれてしまう。主人公レスターが残した、人生の本質を摘み出したような言葉の数々が心に響いて止むことがない。諧謔性や虚構性、悲壮感に満ち、様々な方向に感情を揺さぶる傑作であった。作品賞をはじめアカデミー賞を総なめにしたのも納得の一言である。サムメンデス監督の真髄を見た気がした。

「今日という日は、残りの人生の最初の一日。」


再鑑賞 2021年4月26日
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