チッコーネ

暗黒への転落のチッコーネのレビュー・感想・評価

暗黒への転落(1949年製作の映画)
4.5
法廷サスペンスだが娯楽作に非ず。
回想形式の果てに迎えるクライマックスには、力強い社会派メッセージが込められている。

端正なジョン・デレクが見せる、繊細なアンチヒーローぶりは、非常に魅力的。
特に妻の葬儀を遠巻きに眺める場面は悲劇的で、強く印象に残った。
下降を続ける彼の半生は、ロマンスの渦中でさえ緊張感と背中合わせ。
その描写は、驚くほど生々しい。

証人をおちょくるコメディ演出は良い息抜きとなっており、野村芳太郎の『疑惑』は、意外と本作を参考にしていたりするのでは…、と思ったりもした。