はるな

NINIFUNIのはるなのレビュー・感想・評価

NINIFUNI(2011年製作の映画)
4.5
ももクロがまだZじゃない時代の出演で、彼女らのデビューシングル、行くぜ!怪盗少女がなかなかの鍵となる。個人的には、高校時代にカラオケで歌って騒いでいたこの曲が、今作品では皮肉じみて聴こえてくるので不思議。

本タイトルのニニフニとは、仏教用語の「而二不二」から来ていて、表と裏のような切っても切れない関係という意味らしい。このタイトルが全て物語っているように、綺麗な二項対立で話が進む。

大きな二項対立としては、宮崎将演じる田中の中での「生」と「死」であり、その葛藤である。本作品で彼は全く話さない。しかし、彼と彼が取り巻く環境がその葛藤をありありと表現しているのだ。例えば、彼が闇雲に車を運転していくシーン。自閉空間、個を車だとして、その車つまり個が行き交う空間が車道とする。彼は何度も車道という社会で前進しようと試みるも、時々左折や右折をして雑草しかない荒地に停車する。これは社会への拒絶を表していると言えよう。他の個、つまり他者の中に交わろうとする生への展望は抱いているも、居心地が悪くて社会からの断絶、死へと気持ちが揺らぐ。
後は海辺で足跡を残すシーン。乾いた砂の部分で足跡を付けずに、あえて波が接触し湿った状態の部分で付ける。海と砂という陸の二つの世界の狭間で、足跡を付けては消えていく動きを、彼自身が自分の目でしっかりと確かめているのだ。

また小さな二項対立としては、社会でチヤホヤされて、他者に目を向けられている人間と、誰にも見られていない、社会という枠から疎外された人間である。ももクロという様々な大人に囲まれて生活する人間と、カメラという物理的な視点が捉えてなければ、社会から見過ごされてしまうような存在の主人公。また彼女らの歌う曲のタイトルは“怪盗“、つまりフィクションで登場する盗賊であり、神出鬼没で、手口が鮮やか。一方、主人公は冒頭で紹介があるように、紙面やニュースになるかならないかのような強盗事件を起こした犯人で、ただの“泥棒“でしかない。そんな彼が車中で練炭自殺(あえてゆっくりと苦しみながら死んでいく)を図り、その車内の窓から遠目で見える、ももクロの撮影シーンは、主人公のような人が世界の中で誰も見てなくても存在する怖さを感じる。

特に映像からははっきりとした答えを提示しないが、悶々と様々な事が浮かび上がってくる、繊細な作品。
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