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息子の部屋のKYのレビュー・感想・評価

息子の部屋(2001年製作の映画)
3.7
ナンニ・モレッティ監督作。カンヌ映画祭パルムドール作品。イタリア映画。

家族の事って知ってるようで何も知らない。親の初恋も知らないし、大きな挫折も知らない。反対に自分の人生で大切にしてる人の事や好きな音楽も意外と親は知らない。

今作に出てくるのは仲睦まじい4人家族。隠し事のない本当に仲の良い家族。それでも他の家族の事を意外と知らなかったりもする。それでも一緒に過ごせるんだから、誰よりも大切なんだから凄い。『趣味が合わない』とか『性格が合わない』とかそういう論理で友人や恋人を選びがちだけど、考えてみたらそこが重要ではないのか。

息子の死に直面した家族がその事実と向き合うストーリーだけど、涙を流し悲しみにくれるだけでなく家族が知らなかった息子の姿が明らかになっていく。父は精神科医役で、患者の心を探るのが得意なのに最も身近だった息子の事を意外と知らなかったと気づく。

別に大した発見もないわけだけど、息子の素顔が意外だったからか再び家族が立ち直る。その流れが良かった。息子の彼女が息子の死を知り両親に会いに来るくだりも良かった。息子の彼女が新カレを連れてくるくだりがまさに息子が『過去』になった事をそれとなく予感させる。

冒頭から何か起こりそうな予感たっぷり。ここまで冒頭から幸福な家族を見せる作品は珍しい。息子が学校で盗みの容疑をかけられ呼び出された親。なのに家族の仲良しな描写が続く。家族は息子を疑わず。ドライブ中は家族一緒に歌う。子供が大きいのに夫婦の夜の営みもある。この一連はとにかくうまかった。
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