葛西ロボ

豚と軍艦の葛西ロボのレビュー・感想・評価

豚と軍艦(1961年製作の映画)
4.3
 安保締結に前後する横須賀を舞台にベース(米軍基地)の残飯を豚の肥やしに一儲けをたくらむヤクザ、その末端の人々を描いた物語。「コクリコ坂から」が60年ごろ横浜山手の辺りの話だったと思うが、どぶ板通りを中心とした本作は毛色がまったく異なる。生活のために這いずり回る男たち、海兵を相手取りながらもプライドは捨てきれない女たち。白黒のおかげで薄まってはいるが、臭い、汚い、堪忍してつかぁさいの3Kという感じのカオスさ。
 ヤクザが大筋に関わってくるが、任侠ものというよりは主人公カップルの青春色が強い。もちろんまともな恋愛ではないのだけど。雰囲気的には「息もできない」が近いか。今の日本では撮られないタイプの映画だろう。
 終盤の展開は衝撃必至。もしかしてナウシカってこれからインスピレーション受けたんじゃないか?と思ったり。安保闘争直後に撮られただけあってメッセージ性も強い。日本ヌーヴェルヴァーグの先駆け的作品。
 俺たちは豚にならなければ生きていけないのか? 鮮やかなラストシーンはひとつの答えを出そうとしている。