カラン

乾いた花のカランのレビュー・感想・評価

乾いた花(1964年製作の映画)
4.0
出所したばかりの中年のヤクザが、賭博場で若い女に出逢う。女の賭け方が賭博場の空気を変えて、性的なものではなく、もっと颯爽とした新しい風。。。


ヌーヴェルヴァーグというのは、フランスにおける「新傾向」の映画群だが、ドイツにはニュー・ジャーマン・シネマ、アメリカにはアメリカン・ニュー・シネマ、ブラジルはシネマ・ノーヴォ、イギリスはブリティッシュ・ニュー・ウェーブ、チェコはチェコ・ヌーヴェルヴァーグというのがあり、これらの「新傾向」の走りは、イタリアのネオ・レアリズモという40年代に始まる「新傾向」であり、多かれ少なかれその影響を受けている。日本では羽仁進の他に、松竹ヌーヴェルヴァーグというのがあり、大島渚や吉田喜重、そして本作『乾いた花』(1964)を監督した篠田正浩らが活躍した。

本作の原作は石原慎太郎。当時は、無軌道で自堕落な若者の代表みたいな扱いであっただろう。音楽は武満徹と、高橋悠治。後者は現代音楽を弾きまくりベルボトムでバッハのLPジャケットのポートレートを撮るような方だったので、相当につっぱっていた。で、つっぱっりヌーヴェルヴァーグの篠田正浩が監督である。

つっぱっり軍団が、池部良を激しぶいけヤクザにすえ、加賀まりこを賭博場の妖精にして、できたばかりの首都高をコンバーチブルでかっ飛ばす。

ショットはかなり決まっている。ディゾルブもレベルが高い。薬中のメスを投げてくるヨウとかいう男の登場のさせ方もスマート。鈴木清順の『殺しの烙印』(1967)よりもはるかに洗練されている。洗練されすぎてて、かっこいいですね、という以外は特に何も感じなかった。ヤクザがスマートだと何になるんだろう。何にもならないのじゃないだろうか。加賀まりこの妖精も設定だけだよね。彼女は妖精ですって言われただけでは、ちょっとね。薬で潰れていくところ映したらスマートでなくなっちゃうのかもしれんが、それだったら見たかったかも。

撮影と音楽がいい。アタックが炸裂する武満徹&高橋悠治はたしかによかったが、劇伴は劇伴である。

普通に観てられるが、なんだかな、ウェルメイドというのか、それだけなんだな。

レンタルDVD。画質はこの時代のものとしては立派。55円宅配GEO、20分の20。
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