まぬままおま

青 chongのまぬままおまのレビュー・感想・評価

青 chong(1999年製作の映画)
4.0
李相日監督作品。

李監督が卒業制作で制作した作品とのことだが、凄い…。凄すぎる…。

反物語的物語と言うべきか。確かに青年の朝鮮人としてのアイデンティティを巡る物語、と取り合えず言える。しかしショットは物語の因果律で連鎖されているわけではなく、青年の物語を順に追っていくものではない。
だから青年の姉の結婚物語があり、青年の好きな人が日本人と付き合う物語があり、野球物語があり、抗争物語がある。これら作品全体の大きな物語に回収されないそれぞれの物語がそれぞれにある。しかしこの小物語によって、確かに日本国で朝鮮人としてのアイデンティティを保持したまま生きることの難しさが浮かび上がってくるのである。この主題が虚から浮上することに上手さを感じずにはいられない。

そして何より在日朝鮮人をエンパワーメントすることも可能な本作で、ヒロインに「チョンコウセイは嫌い」と言わせるのは凄い。
他にも切り替えを正面のショットでやったりとただただ凄いとしか言えない。