義民伝兵衛と蝉時雨

美しきセルジュの義民伝兵衛と蝉時雨のレビュー・感想・評価

美しきセルジュ(1957年製作の映画)
4.2
シャブロル監督の母方の実家があるクルーズ県サルダンの田舎町。豊かな自然と西洋の古風な家々。この美しいロケーションの素晴らしさだけでも終始感嘆。そしてカメラワーク、編集、若き映像作家の才能が躍動する。「エデンの東」のジェームズ・ディーンを彷彿とさせるようなジェラール・ブランの熱演、そしてジャン=クロード・ブリアリ、ベルナデット・ラフォン、発芽したばかりのヌーヴェルヴァーグの才能がこちらでも瑞々しく迸る。内容はブレッソン監督の「田舎司祭の日記」に通ずるものがある。愚かしくて痛ましい人間社会。不条理、混迷、無知蒙昧、迷妄、不信など、生の苦悩が蔓延する田舎町。この悲痛な人の世を高山の峰からロバのバルタザールが達観した眼差しで見つめていそう。ラストの笑顔の先に見えているのは幸福の光か? それとも更なる地獄か? ブラン演じるセルジュとブリアリ演じるフランソワの関係性、シャブロル監督の次作「いとこ同士」とは双子のような作品。