いずみ

美しきセルジュのいずみのレビュー・感想・評価

美しきセルジュ(1957年製作の映画)
4.9
シャブロル、これが処女作とか恐ろしすぎるほど美しかった。フランスの田舎町に12年ぶりに帰省したフランソワ。そこでセルジュという目立ちたがりやの昔の友人と再会するが彼は暗く俯くままだった…。最初観ていてゲイものかとも思ったが男と女と男の関係性を描いた作品だった。わりと最初のシーンでマリアとフランソワが岩場でキスを交わす全景ショット、二人の顔を日が照らすシーンがとても美しい。田舎町の坂道を映すシーンもカメラがよく動き、被写体を捉えて離さない。マリアが非常にムカついて勝手な女で仕方なかったが彼女の上目遣いがまるで17歳には見えない。フランソワがセルジュに真剣に正面から友情を取り戻し、本心を話す姿に心打たれる一方、それを拒否したり受け入れたりと奔放なセルジュの姿はまだ幼い子供のようだった。ラスト、自分の子供がようやく産まれたときに笑うセルジュの声で幕は閉じる。フランソワと再び再会し、ある意味での人間性を取り戻したセルジュのラストはそれこそ美しきセルジュの姿であった。セルジュの妻、イヴォーヌがフランソワが来てからセルジュがおかしくなったと言っていたがそれはもしかしたら褒め言葉なのかもしれない。人生ベスト。
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