Jeffrey

美しきセルジュのJeffreyのレビュー・感想・評価

美しきセルジュ(1957年製作の映画)
3.5
「美しきセルジュ」

冒頭、荒寥な田舎町を走る1台のバス。故郷へ戻った男と故郷にいる幼なじみの男。2人の再会とマリーと言う女性の存在、建築家志願、酒呑、カフェ、散歩、死産、上京断念、赤子。今、2人の男を軸に物語が展開される…本作はC.シャブロルが1957年に監督したドラマで、この度BDにて再鑑賞したが面白い。これが彼にとっての長編デビュー作である。その翌年には早速金熊賞を受賞している。

この作品はクロード・シャブロルが短編映画などを撮らずにいきなり長編デビューした27歳の時に作品である。そう考えるとかなり凄いと思う。この映画の面白い所というか画期的なところは幼なじみのフランソワが現れたことによって情緒不安定だった肉体労働者のセルジュがさらに自己嫌悪と自暴自棄に陥ってしまうところだ。なんたってもっと悲惨なのは結核になっているフランソワの方なのに…彼が安定していると言う点は面白い。


さて、物語は肺病の療養のために故郷の村に帰省したフランソワは、幼なじみてあるセルジュと久々に会う。建築家志望だったセルジュは、恋人のイヴォンヌを妊娠させたため上京を断念していた。その最初の子供は死産している。それもあって彼はアル中になり、二人目の子供を妊娠した妻に構わず、義妹マリーと関係を持つ。厳しい生活から友を救おうとするフランソワだが、マリーに誘惑されあまり頭に入らなくなる。とある日、カフェでのダンスパーティでセルジュはマリーと踊り、イヴォンヌに同情したフランソワに憤慨し彼を叩きのめす。それでも冬になっても村に残るフランソワ。吹雪の晩、イヴォンヌは産気づき、フランソワは医者を探した後、セルジュを連れ戻す。やがて、二人の耳に赤ん坊の声が聞こえた…

本作の冒頭は原風景な田舎町の固定ショットで始まり、1台のバスが道沿いを沿って走ってくる。カットは変わりカメラはバスに乗る眼鏡をかけて新聞を読んでいる1人の青年を捉える。バスは町に止まり彼が降りてくる。彼はその場にいたセルジュと言う男に声をかける。彼は一瞬振り向くがタバコを口にくわえ背を向けて歩いて去ってしまう。男の名はフランソワで肺病の治療のために故郷に帰省したのである。カフェテリアの2階に寝泊まりするために彼は向かう。

続いて、義父とセルジュがワインを飲みながら酔っ払って家を立て直そうと話しているシーンへと変わる。そこにフランソワが来て彼の名前を呼び2人は抱擁する。そこに2人の女性が現れて2人を外に出し去っていく。若い方の女性の名前を聞くフランソワ、彼女の名前はマリー。いつも2人の世話をしているようだ。翌日、コートを着てフランソワは外に散歩しに行く。カメラはテンポの良い音楽と共に外の景色と彼を映す。

続いて、フランソワは街の友達にセルジの家はどこか聞く。彼は町外れのところにあると言い、彼は向かう。そして家に到着し中へ入り椅子に座り家の中にいる女性と会話をする。するたセルジュは寝ていたが、彼に気づき起きて喜びながら彼に挨拶し会話をする。そこに昨日いたマリーが現れフランソワと握手をし自己紹介する。ここで朝食を取る。そしてご一行は外へ出る。

続いて、フランソワとマリーは彼女の自宅でベッドの横になる。そろそろ父親が来るから帰ってと彼に、2人ら外に出て散歩しながら会話をする。一方でセルジュは飲んだくれな生活をしている。家に帰宅し、なんて惨めな人生だと嘆く。そして酒場に行きまたたらふく酒を飲む。やがて外でサッカーをしている数十人の子供たちがフランソワと言葉を何度も連呼することに苛立ち、少年たちにやめろと言い追いかけ回す。

彼は酔っ払いながら千鳥足で墓場にやってくる。カットは変わり、フランソワが自分の寝泊まりしてる宿の食堂でコーヒーを飲みながら新聞を読む場面と変わる。そこにマリーが現れる。会話をした後、フランソワはセルジュと話があると言うことで2人は散歩をする。やがて物語は佳境に入り、セルジュの嫁が出産するが…と簡単に説明するとこんな感じで、セルジュ役のジェラール・ブランの最後の表情のクローズアップがなんとも余韻残る終わり方だ。



ま〜兎に角、ロケ地である田舎町の原風景が美しいのなんのって、本当に澄み切った空気がおいしいだろうなと言うのが画面から伝わるほどの風光明媚な街の景観と風景だ。セルジュとフランソワが散歩する道沿いや、地べたに座る草原のショットなど綺麗だ。雪景色のショットも美しいし、風景を楽しめる映画でもある。

俺は圧倒的に「いとこ同士」よりこっちの作品の方が好きなのだが、クロード・シャブロル作品て言うのは基本的に男同士の絆を描いているように感じる。それにこの作品てセルジュが最初の子供を死産してしまったことによってショックを受けてあーなってしまっているのだが、実生活で監督自体も最初に子供をなくしていると言うことだが、やはり自伝的な作風になっているのだろうか…実際にこの作品をあまり評価していない監督自身の姿を見ると後のサスペンス要素が一切入っていないことに対しての不満なのか。

とにもかくにもこの映画は風景とクライマックスの"声"で終わってしまうのが非常に好みである。
Jeffrey

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