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トウキョウソナタのbのレビュー・感想・評価

トウキョウソナタ(2008年製作の映画)
4.3
東京に住むある四人家族の物語。冒頭嵐の夜、家の窓から風が入り込んで来る意味深なシーンから始まる。その後の家族関係への波乱を予感させる。
この家の立地条件が完璧過ぎる。丁度家の真横を線路が横切っている。その走行音は家族の日常に黒沢映画らしい不協和音として鳴り響く。ホームドラマながら黒沢演出によりホラー映画の趣を感じさせている。

この家族はそれぞれが家庭内での役割に縛られ過ぎている(主にそれは父親が作った理想像)。母親ならこうあるべきだとか、子供ならこうあるべきだとか、勿論それは父親自身にも作用している。そんな家族は関係が円滑に回るわけはなく...という具合に基本的にシリアスなトーンの話なのだが、黒沢監督は油断出来ない。シリアスな話かと思えば、突然大ボケをかましてくる。教師役のアンジャッシュの毒島さんのクズさが良い感じに笑えるし、何だよ!あの階段の落ち方は!(笑)途中誰もが呆然または驚愕する意表を突く展開があるのだが、その後の小泉今日子と役所広司の関係性がいつの間にか逆転してるのも笑える。兎に角シュールなボケが冴え渡っており所々爆笑出来るのもこの作品の魅力の一つ。 

散々家族の崩壊を描いといて、最後には家族が向かう方向に希望を見せて物語が収束する。これが黒沢監督なりの家族観なのだろうか。
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