ケンシューイ

渦のケンシューイのレビュー・感想・評価

(2000年製作の映画)
3.0
珍味を初めて食べたときの感覚に近いのかもしれない。ウニとかイクラとかあるいは納豆とかって、これは食べ物ですよっていう前提があるから、食べてみてなるほどこの味は美味しいなと思えるような気がする。
この映画の始まり方は独創的で、見た目にもグロテスクだったので、ちょっとその時点で観るのやめようかなと躊躇してしまった。でもこれはヴィルヌーヴ監督の作品ですよっていうのがあったから、信じて最後まで観れたのはある。

客受けしようと思ってたらできない。自分の世界とか信念とかを感じる。実験的な要素が強い。
でもだんだんとあの魚に愛着が湧いてくるのが不思議。そこには今まで皆さんが味わったことのない旨味が隠れてるんですよと言わんばかりに。たぶん監督は“食”に対するコンプレックスが何がしかあったんじゃないかな。と勝手に想像してみたりもして。『メッセージ』に出てくるのもタコのような物体だったし。
とにかく見た目の第一印象とは裏腹に、脚本・演出・撮影ひとつひとつの要素に着目していくと、面白いアイデアがたくさん詰め込まれてて楽しめたし、まるでホラー映画のように感じたものが気付けばコメディなのかなと思えるくらい不思議な味わいがあった。監督が33歳のときの作品か。若いうちにとりあえず一回、頭ん中にあるもの全部出しとけみたいな感じかな。