kikki

海と毒薬のkikkiのレビュー・感想・評価

海と毒薬(1986年製作の映画)
3.8
「罰って?世間の罰なんて、まずまずそんなもんや」"神"からの罰を受けたかったのではないのか戸田は。「良心なんて考え1つでどうにでも変わるもんや」勝呂に言い聞かせているのではなく、自分自身に言っているのだろう。優しいというより気が弱い勝呂、孤独で退廃的な思いを醜悪な態度に表す看護師、とことんデリカシーのない"アホな奴等"軍人達も、欲と保身のみの医師達も全て私達の姿。
時に美しく優しい調べもあれば、不気味に荒々しく響くピアノもまるで人の心のよう。汚れを洗い流す水面のような手術室の床や真っ黒な背景に浮かび上がる白衣、緊張の中ドクンドクンと静かに動き出す心臓等々、印象的。実話ではあるが、遠藤周作が生んだ名作と彼の苦悩が、モノクロで魅せる秀逸な映像作品になっていると思う。
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