Jeffrey

楢山節考のJeffreyのレビュー・感想・評価

楢山節考(1983年製作の映画)
3.5
「楢山節考」

本作は昭和五十八年に今村昌平が監督して世界三大映画祭の一つカンヌ国際映画祭で見事パルムドール大賞を受賞した傑作で、木下惠介のオリジナルをリメイクしたものに当たる。原作は深沢七郎で、脚本は今村が執筆している。因みに八十年には黒澤明の「影武者」もパルムドールを受賞しているため日本映画は二度受賞している(黒沢の場合はAll That Jazzと同受賞である)。この作品は当時カンヌでは大島渚の「戦場のメリークリスマス」が受賞するのではないかと言う噂があったが、番狂わせで見事に今村が受賞した。正直大島にとっては屈辱的だっただろう。しかし、本作は日本制作側のみの制作費で作られた作品で、大島のは多国籍による資金が入り込んだ映画である。何が凄いって、この時のコンペに出品されていたブレッソンの「ラルジャン」やタルコフスキーの「ノスタルジア」を抑えてだからビビるよな(ちなみに上記の二作品は私のALL TIME BESTに入るほど大傑作だと自負している映画である)。

結局のところ大島VS今村と言う形になり、海外の映画祭で日本人同士がバトルをすると言う滑稽な出来事になったのも忘れがたい。結局最高賞を受賞したのは今村だが、日本国では圧倒的に戦メリの方が興行収入的にも良かっただろうし、人気もデビット・ボーイ主演のそっちに行っただろう。でも結局当時のマスメディアが大宣伝して両方とも結果的には興行収入的にも大成功している。映画評論家のおすぎとピーコ辺も映画祭に乗り込んで、大島が負けたことに対してものすごく悔しい思いを如実にしていたことも思い出される。うろ覚えだが、確か大島側の総力が色々とパフォーマンスしたことによって反感を浴びて、今村自体が映画祭を欠席してしまったと言う逸話もあったと思う。確か映画祭ではグランプリを受賞した際に監督がその場にいなかったのも初めてだったような気がする。まぁとにもかくにも、今村昌平と緒方拳がタックを組むと素晴らしい映画ができる。所々に小動物や昆虫の交尾のシーンをクローズアップしているところがグロテスクすぎる。こういう交尾の仕方するんだと見れるのは非常に貴重な体験かもしれないが。それと蛇がネズミを丸ごと飲み込むシーンとかインパクトがある。ただこの作品がパルムドール賞っていうのはなんだかなぁと言う感じがする。だからといって大島渚の「戦場のメリークリスマス」のパルムドールにふさわしいとは全く思わない。この年は本当にいい作品というかずば抜けた作品が出品されていなかったのかもしれない。
Jeffrey

Jeffrey