あべきょ

タクシードライバーのあべきょのレビュー・感想・評価

タクシードライバー(1976年製作の映画)
3.5
これは観る時期によってかなり思うところが変わってくる作品。
『JOKER』、それから安倍首相の銃撃事件の後で観ると、必然的にトラヴィスを凶行に駆り立てた環境や社会的背景に目が向いてしまう。
ベトナム戦争帰りのトラヴィスは、人一倍正義感を持ちながらも何者にもなれず、女性との距離の詰め方も分からず、かといって思い切って街を出ることもできない中で鬱屈としたモヤモヤ感を蓄積していくが、それはやがて「銃」を触媒としてエネルギーに変わり、彼自身のアイデンティティとなっていく。
そのエネルギーの発散先が大統領候補ではなくギャングへと最終的に向かっていったのは意外な展開だったが、それゆえに社会的には「ヴィラン」ではなく「ヒーロー」に近い扱いを受けたため、ハッピーエンドのようにも一見思える。しかし、ラストシーンで車視点で映る光り輝くネオン街の風景は、社会の負の側面そのものは結局何も変わっていなかったというエンディングを示唆している。

社会的な語りどころの多い作品だが、子役時代のジョディー・フォスター普通に可愛すぎるし、トラヴィスの部屋のゴチャゴチャ感も好きだし、エンディングで流れるジャズの何とも言えない哀愁もいい感じ。総じて見どころの多い作品だった。
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