こーひーシュガー

タクシードライバーのこーひーシュガーのレビュー・感想・評価

タクシードライバー(1976年製作の映画)
3.6
【"正しさ"としての慈悲―――『タクシー・ドライバー』】

『ジョーカー』はこれに影響されたんだな。
確かに似ている。
犯罪、貧困、格差、政治…
汚物あるところに怒りあり。
貧困は犯罪へと人を走らせる。
それに抗うべく正義感を持った人間は、どんな手段でも己を突き通そうとする。
その正義感が悪へと変わっていくとしても…

そしてその悪は、必ずしも完全悪とは限らない。
トラヴィスのしたことは正しかったのか…
どこまでが正しくて、どこからが正しくないのか…
それともすべて正しいのか、すべて正しくないのか…
アイリスは幸せになれただろうか…
なれてることを願う。

不幸な人々への慈悲を持ったことで、その不条理さへの怒りが沸きあがった者は、世の中を蝕む存在だけでなく、世の中を変えようと努力する者へも牙を向けてしまう。
他人に限らず自分自身に対しても慈悲深いのはいいことだ。
たが、しょせん他人は他人、自分は自分。
他人からの慈悲など人はどうでもいい。
慈悲をかけてあげることは自己都合でしかない。
その慈悲とやらをいかに正しさへと向けていくのかが大事なことなのだろう。
いや、"正しさ"なんてものは、自分が勝手に決めた基準でしかないのか…
無力だ。理不尽だ。
政治家は自分の考えを正しいと信じて疑わないかのように演説したり、議論する。
持つ者と持たざる者の差はそこにあるのではないか。

そんなことを観終わって考えた…