かずき

タクシードライバーのかずきのネタバレレビュー・内容・結末

タクシードライバー(1976年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

2017.1.15鑑賞。

戦争により精神を蝕まれたタクシードライバーの鬱屈を、若きデニーロが圧倒的な演技力で演じる。
主人公トラビスは、『クズだらけの街』から逃げ出したいと感じている。しかし閉塞感に絡め取られながらも、彼は街から逃げられない。何度も何度もしつこく描かれるタクシードライバーとしての仕事が、その鬱屈とした雰囲気を色濃くする。ここでは何故か美しいBGMさえも、その一助となってしまう。
人生の敗者としての絶望に苛まれ、鬱々としたトラビスの表情は徐々に狂気を孕んでゆき、彼の純粋さがそれを殊更おそろしいものとして映し出す。
綱渡りのように危ういバランスのまま映画はクライマックスを迎えるが、彼が望まずして望んだ革命者としての最期は皮肉にも捻じ曲げられてしまう。
事件を乗り越えた『英雄』トラビスの顔には、諦めとも満足感ともつかない笑顔が浮かんでいる。再びクズだらけの街に戻った彼の目には、その風景は以前と違って見えるのだろうか、それとも。
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