くま

タクシードライバーのくまのレビュー・感想・評価

タクシードライバー(1976年製作の映画)
4.0
JOKER上映に伴って話題になっており、視聴。独特の恐怖と衝撃を味わった。

戦争を体験したことでPTSDに苦しむ以外は、決して悪い人間ではないはずのトラヴィスが、世間とのズレや疎外感に苛まれ、狂気に取り憑かれ、合理性のない動機によって犯罪を犯す様は、現在たびたび報道される、いわゆる「異常犯罪者」と重なる。

思い返すと、終盤まで起伏のない話で、退屈に思えてしまう。
しかし、そのおかげで、「健常者のようなトラヴィスが異常者に変容する様」「他の登場人物と違って社会に居場所のないトラヴィス」が明確に縁取られている。異常な話のようで、実はコモンな話に仕立て上げられているようにも感じる。
でも、ロバート・デ・ニーロだから見入ることができた、と言っても過言ではない。彼じゃなかったら、見るに堪えなかったかも知れない。

あと最後のアイリスの部屋を俯瞰する映像が、余韻を引き立たせている。何だ、この天才的な演出は。

この後に視聴するJOKERと、どれだけ通ずるものがあるのか、非常に楽しみである。
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