ジョーカーと本質的なメッセージは同じ。
救われない男の物語。
自分を受け入れてくれない、置いてけぼりにしていくどうしようもない現実、社会に対して衝動的破壊行為を行った結果、ジョーカーの場合は同じような境遇の人たちから、本作の場合はその社会そのものから、ヒーローとして祭り上げられる。
皮肉でしかない。
ジョーカーの方が、「バットマンのジョーカー」という観客ないしは監督自身がもつ先行イメージと演出により、妖艶にドラマチックに描かれている。エンタメ的。
一方本作はタイトルからも分かる通り、どこの街にでも存在するタクシードライバーが主役であり、何者でもない分よりリアリティーがあった。また、現社会の象徴である大統領候補の暗殺に失敗し、その暴力の矛先を少女を救うという大義名分で常日頃から自分より下に見ていた者たちに向け、それが結果として称賛される結末は、アイロニー爆発であった。
社会的弱者が成り上がる様は爽快で気持ちが昂るが、その際の盛り上がりは一種のトランス状態であり(歓楽街のネオンはメタファー)冷静な判断ができない。さらに身近な存在であると感じる為、感情移入もしやすい。暴力的行為も正当化されてしまう。
大切なのは一人一人が自分の正義の価値観をもつこと。
僕はそれこそ、要所要所で流れるジャズのようにおしゃれに乗り越えていきたい。