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タクシードライバーのJのレビュー・感想・評価

タクシードライバー(1976年製作の映画)
5.0
一番好きな映画なのにレビューがあまりに適当だったので再投稿。

ロバートデニーロ演じる主人公トラヴィスはベトナム帰還兵。タクシードライバーとしてNYの街とそこに住む人々の退廃的な様子を眺めるうちに、次第に狂気に囚われていく様を描いていきます。

「タクシードライバー」だけでなく、マーティンスコセッシの作品の大きなテーマが贖罪と戦争による心の傷にあるので、キリスト教徒ではなく戦争の経験もない僕ら若者にとっては完全には理解できないはずです。

しかし、理解できないながら観る者をどこか共感させ、人々を惹きつけるのがスコセッシ及びデニーロの手腕です。完全なる狂気ではなく、正気と狂気の狭間に生きるトラヴィスをデニーロが完璧に演じ分けます。

スコセッシとデニーロはこれ以降も何度もタッグを組んでいますが、「タクシードライバー」がここまで素晴らしい作品になったのは、撮影監督のマイケル・チャップマン、音楽監督のバーナード・ハーマンという2人の力も大きいでしょう。

夜のNYの街が多く登場するわけですが、これが本当にエモーショナルに撮影されています。また、それにリンクするように流れる音楽が素晴らしい。特に映画冒頭のシーンは不気味さとエモーショナルで美しい様が音楽と映像によって引き立てられています。

バーナード・ハーマンはこの映画の最後のレコーディングが終了した12時間後に亡くなっています。儚く美しい楽曲は彼が死期が近いことを予見していたのかと思わせます。

文句なしの満点、オールタイムベスト1位です。
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