けすん

タクシードライバーのけすんのレビュー・感想・評価

タクシードライバー(1976年製作の映画)
3.9
世間や自分の私生活に不満を抱えるタクシードライバーのトラヴィスが、アイリスとの出会いをきっかけに塞ぎ込んでいた狂気の部分をどんどんとさらけ出していく。

この作品ではトラヴィスの異常な性格が印象に残った。割と序盤の方でも発言に対する矛盾や彼の行動からなぜか恐怖を感じた。アブノーマルな人物という事はすぐにわかったが、彼なりの善は自分の中で強く持っており根っからの悪ではないことは見て取れた。(アイリスに対して真摯に向き合う姿は紛れもないジェントルマンだった。)

善意から行なっていることだがやっていること自体は残虐な犯罪。しかし何故か彼を少し肯定してしまう自分がいたのも事実。世の中に対する不満や、やり場の無い思いを誰かにぶつけたいという気持ちをありのままにさらけ出していたのが羨ましいと感じてしまったのだと思う。

スコセッシ監督独特の生々しい暴力の描写も健在であり、後半にそういったシーンが畳みかけてくる。この作品は人間の弱さについて考えさせられると同時に、善は人によって意味が異なり一概にこれが正解と定義することは難しいというメッシージだったのかもしれない。
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