囚人13号

群盗、第七章の囚人13号のレビュー・感想・評価

群盗、第七章(1996年製作の映画)
3.8
四つの時代の殺戮と不寛容、藤子不二雄の漫画みたく壮大な妄想的円環を経て冒頭に帰結する。

ただし時代を繋ぐ要素が暴力というわけではない、同じ俳優に演じられる各々のキャラクターが置かれた境遇の対比によってカメラの唯物的な不変性がアイロニーな光景を映し出す。戦争と拷問、処刑の歴史から炙り出されるのは甘ちょろい平和メッセージなどではなく、人間の果てしない残虐性に呆れつつ何にも関与しない人々(紛争中でも平気で歌っている男たち)こそが王様より、ブルジョワより、密告クソガキよりずっと尊く素晴らしいというイオセリアーニらしい持論である。
ただ語り口は時代が急に飛躍するため割合も含めかなり独特だが、中世の拷問部屋で王が読んでいたガイド本が数世紀後に発見されたり、終盤に肖像画が出てきたりするので観客にモンタージュを意識させることなく物語を自在に操ることが可能となる(そもそも切り替わる回数が少ないのだが)。

ゆりかごを揺らす女が神秘性を纏うのは無声映画のみであると知っていた強かさは見事、しかし構図の詰め込み具合というか小道具やフレーム内要素の多さはヴィスコンティとさえ相容れない不慣れさが露呈されていた気もする。
囚人13号

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