びこえもん

ドラゴン危機一発のびこえもんのレビュー・感想・評価

ドラゴン危機一発(1971年製作の映画)
3.5
アメリカで活動していたブルース・リーが香港に移ってから最初の本格主演作とのことだが,後世まで語り継がれるほどのスター性というか風格のようなものがしっかりと感じられた。

前半こそずっと周りの流れを傍観しているばかりで特に見せ場があったようにも思えないが,いざ自分が殴られるとさっきまでボサッと立ってる感じだったのが急に筆舌に尽くしがたい気迫を出し始める。
シバかれてから相手の方に向き直る瞬間ギロリと相手を睨み返す形相からは一言も発してないけど「あ,今キレたな」みたいな心情変化がありありと伝わってきて演技力も並々ならぬものを感じさせられる。ついに闘うとなると立ち居振る舞いからして迫力の化身みたいに豹変。そうなるともう立ってるだけでも一人だけ明らかにカッコいい。もちろん躍動感のあるアクションで敵をなぎ倒していく動的な部分もキレがあって素晴らしいし,観る前もそういうのが凄くて評価されてるのかな〜と何となく想像してたけど,むしろ立ち姿のような静的な部分で一気に殺気を出してくるあたりに伝説的大スターたるゆえんを見たような気がする。

自分が観たのはリー没後の1982年のリバイバル版の広東語音源らしく,これは音声が全員別人で吹替+後年に別作品からサンプリングした"怪鳥音"を合成(後者はリー本人の声だが)しているようで,実際口の動きと声が全然合っていなくて声が映像からかなり浮いて聞こえるのはちょっと気になってしまった。どのみちオリジナルも北京語で声は本人じゃないらしいからそこら辺どうだか分からないが機会あればそっちで見直してみたいと思う。