鰹よろし

THEM ゼム/正体不明 THEMの鰹よろしのネタバレレビュー・内容・結末

THEM ゼム/正体不明 THEM(2006年製作の映画)
2.9

このレビューはネタバレを含みます

 安全地帯を侵される恐怖。果たしてあなたが築いたその領域は安全か?

 最初に車でそれを描いたのはうまかった。雨風を凌げファラデーケージともなるそれは、中のモノを本気で狙っているわけでなければそうそう侵されるものではない。しかしそもそもは移動手段として利便性が追及されたもので、安全性を謳う物は多いが中の人を外敵から守るという目的はほとんど考慮されていない。そもそも外敵を想定していないのである。

 つまり車の安全とは、車がその使用者を守ってくれるという保証では決してなく、それぞれのモラルありきで暗黙の了解(明記された法律含め)を守ることで達成されるものなのである。これが実は簡単に踏み外すことができるものだというのが恐ろしいところで。しかし普通は、意図しては踏み外さないわけである。

 では、そもそもそのモラルが無い人間が介入してきたらどんなことが起こるのか?

 これを車の外から何かを投げつけている者とすでに中に侵入している者とで複数犯ということを示唆しつつ描いてしまうからこの作品は恐ろしい。他人様の車に物を投げつけますか? 他人様の車の鍵が開いているからといって無断で乗り込みますか? そして最後の犯人(像)である。

 他人様が絶対に手の届かない場所などモラルを取り払えばどこにも存在しなくなる。誰かの所有物であろうと、境界線として機能しなくなるのである。
鰹よろし

鰹よろし