「無法松の一生」🎬26
明治30年、小倉に無法松と呼ばれる人力俥夫の松五郎がいた。そんな彼は喧嘩っ早いことで評判で、ある日、芝居小屋で仲間の熊吉と嫌がらせをし、木戸番と喧嘩するが、結城重蔵の仲裁で素直に謝った。松五郎は意気と侠気のある男だった。
その後松五郎は堀に落ちてけがをした少年・敏雄を助ける。敏雄の父親は陸軍大尉の吉岡小太郎であり、これが縁で松五郎は吉岡家に出入りするようになった。しかし、吉岡大尉は雨天の演習で風邪を引き急死した。夫人のよし子は、敏雄が気の弱いことを心配して松五郎を頼りにする。松五郎は夫人と敏雄に献身的に尽くしていった。
午前十時の映画祭にて鑑賞。
今作の前に「ウィール・オブ・フェイト」という本編に関するドキュメンタリーが上映されたため背景については事前に理解することができた。
それでも検閲によって失われたシーンの痛手は計り知れなく、分かっていても最後は唐突に思えてしまう。
一方で描写が丁寧なため十分に松五郎の生きる世界を楽しめた。
桜が散り、鯉のぼりがあがり、豆まきが行われる…風情がありつつ、時に人力車の車輪による時の流れの描き方もまた良い。
それにしても、日本の白黒映画を全然見たことない私でも宮川撮影カメラマンの手法や技術には驚かされた。
ちゃんと画角を活かした奥行きのある撮影や四重にも重なる映像の作り方は素晴らしい。
阪東妻三郎の演技も勢いがあって松五郎という男の性格を分かりやすく親しみやすいように表現されていて良かった。
吉岡夫人を演じた園井恵子も控えめな夫人を演じていて印象的だったけど、広島で被爆して32歳という若さで亡くなったと知って、なんだか切ない気持ちになった。
私的には☆☆☆.9かな。
今作だけだと、稲垣監督の希望であった描き方とはほど遠いのはよく分かるし、なんとも評価が難しい。
そのためにも来週以降に上映される三船敏郎版の「無法松の一生」も絶対に見ようと思う。