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ジェイコブス・ラダーのniwajunのレビュー・感想・評価

ジェイコブス・ラダー(1990年製作の映画)
4.0
パッケージはホラーですが、ホラー描写は全体の2割程度でこの映画のほんの味付け程度の役割です。
この映画が本当に伝えたい事は反戦ではありません。公開時の1990年から現在までなお罪悪感やPTSDに苦しみ、或いは彼の地で無念にも散って行った自国の兵士への救いを語った作品です。

ジェイコブズラダー=ヤコブの梯子とは旧約聖書のお話です。ヤコブが石を枕にして寝た場所で神が夢枕に立ちます。その際ヤコブは天国への階段(ヤコブの梯子)を観たと言うお話です。

本作はヤコブの梯子=天国への階段と言うタイトルですがその通りなお話です。正直な所感動しました。

終戦後、多くの兵士がPTSDで悩み、罪悪感にさいなまれ、家庭が崩壊し、苦しい思いをした兵士が多かったのでは無いでしょうか。作中に描かれるジェイコブの夢と現実の二重生活はそんな兵士達の生活のメタファーでしょう。
そんな兵士にも神は天国への階段を登らせてくれると言っているのでしょう。


映画の構造ですが、プロテスタント的な視点と死への向き合い方を感じます。主人公の家庭を善、離婚後の現在を悪として描いているように古き良きアメリカ的な家庭を賛美して描くのはキリスト教の中でも保守派のプロテスタント的な視点です。作品内に出てくる十字架もほとんどキリストが磔にされていない為、プロテスタント信者が多く出てくる作品なのでしょう。

同棲する女性は悪魔の象徴なのでしょうか。神を否定し、愛欲にまみれ嫉妬深く自由で音楽パーティー(ある意味悪魔崇拝)を謳歌しています。

宗教的規範を大切にする古き良き家庭と、そうで無い人を対象的に描いているのでしょう。同時に悪魔を信じる事は逆説的に神を信じると言う事にもつながっています。

ヤコブの梯子は旧約聖書(ユダヤ教)の話ですが本作はキリスト教をベースにした話です。プロテスタントはキリスト教の中でも教会や司祭にこだわらず信仰の大切さを説く宗派です。作中では様々な場所で悪魔的描写が現れますが、眠った際にジェイコブにとっての幸せな描写が描かれます。最悪な環境でも、異国の地でも神を信じる全ての人に如何なる場所にも神は天国への道をお示しになるのでしょう。

そんなプロテスタント的メッセージが込められた救いのある素敵な映画でした。
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