豚

ジェイコブス・ラダーの豚のレビュー・感想・評価

ジェイコブス・ラダー(1990年製作の映画)
3.4
元ベトナム戦争兵のジェイコブに降りかかる、いくつもの理不尽な悪夢を描いたサイコスリラー。
過去と現在、そして現実と夢の境界線が非常に曖昧な絵作りなため、一見では消化できない要素がかなり多い。
それを差し引いても"悪夢"の強烈なビジュアルインパクトは群を抜いていて、正直この部分だけでもこの作品に価値はあると思った。

いくつかの示唆的要素はあるものの、最後まで観てようやく全体を理解できる物語になっているので、分かったうえで再度観てみるとさまざまな発見があるかも知れない。
が、正直2回観るのに耐えうる構造をしていないので、自分は1回でギブアップ。
もう一度観たいのはやまやまだけど、再度観るのはずいぶん時間を置いてからになりそう。

人間は睡眠時、さまざまな記憶や出来事、願望をもとに自身の夢を作り出すのだという。
そこには当然、希望もあれば絶望もあり、理想もあれば現実もある。
それゆえ夢が描く荒唐無稽な世界は現実離れしつつも、どこか離れがたい危険な魅力を持っている気がする。
そしてこの映画もまた、そんな危険で脱俗的な面白さ、深みを持っている。

だいぶ好き嫌いのハッキリした作品ですが、個人的には興味深い展開と哲学的テーマで結構引き込まれました。
全体的に暗く重々しい雰囲気なので、観終わったあとどっと疲れます。

自分が今、こうして生きてレビューを書いているこの瞬間が、"夢ではなく本当の現実"であるという確かな証拠は、果たしてあるんだろうか?
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