メタ

ジェイコブス・ラダーのメタのレビュー・感想・評価

ジェイコブス・ラダー(1990年製作の映画)
4.1
「死を恐れ生き長らえていると、悪魔に命を奪われる」
「死を受け入れると、それらから解放されて悪魔は天使に変わるんだ」


受け入れる、か...



潜在意識の混沌さ、その前で意識は、振り回されるにすぎない。その混沌さが、叫ぶように訴える。だから、心をひっかくような印象的なシーンが生まれる。

とくに印象的なのはクラブのシーン。
最高に刺激的。エロスが刺さる。
この世のものではない「異形な何か」と人がファックする。毒々しい造形が気持ち悪いのに、最高にエロい。生理的に、本能的に反応せざるえない「凄い」シーンだった。自分でもどうしてこんなに反響したのか不思議だ。良い悪いという価値観はさておき、人は、普遍的に反応してしまうのではないだろうか。こうした根源的な何か、に。まるで、差別やいじめに、人が過剰に反応してしまうように。

そして、病院のシーン。
うーん凄まじい。気が狂わんばかりの描写の数々。
「ここで<異>なのは俺たちじゃない、お前の方だ!」と言わんばかりに、異形なものたちが闊歩する。異形なものたちの「世界」だ。ジェイコブの潜在意識がこう訴えているのかもしれない。無意識の領域には、<異>も<普通>もない。境界なく「わたし」なのだと。この全部を認めろ、と。


この映画は、こうした無意識レベルで拒否したくなる雰囲気の構成が本当にうまい。トラウマ的シーンをいくつも作り出す。これだけトゲがある映画なのだから、確実に誰かに引っかかるところがある。

そして、中心的なテーマは、<自己受容>という概念だろうか。

自分を認めるとはどういうことなのか、実感できているか?
自分と向き合うことから逃げている人が多いのでは?

ほとんどの人は、インチキな自己肯定をしている。だからこそ、社会で生きるのがどことなく苦しい。
私は、私の一面しか見たくないのだろう。ジェイコブの潜在意識のように、私の潜在意識も叫んでいるのではないか?


そんな私たちに、この映画は、「自分を受容せよ」と訴えてくる。ありのままから逃げいている私たちだからこそ、この映画のジェイコブの辛さが身にしみるのかもしれない。


色々と考えられる映画ですね。画が強いからこそ、です。


DVDのメイキングは必見。
画も理念も、見どころ満載です。
メタ

メタ