Genichiro

小早川家の秋のGenichiroのレビュー・感想・評価

小早川家の秋(1961年製作の映画)
4.1
新珠三千代、好きです。今作は小津が東宝で監督した唯一の作品であり、関西を舞台にした作品。冒頭のネオン、この色味がいいよねー。並べられた桶など、家の外の様子もいい。一瞬映る「チャイナサロン 夜来香」のネオン、印象に残る。他の人も書いてた。往年の名作群のような緊張感は全くなし。ダラダラ見る分には楽しいね。セリフの面白さは相変わらず素晴らしい。二代目 中村鴈治郎が最高、「ピースか、えらいええタバコ吸うとるな」。この中村鴈治郎が特筆すべき存在で、全く小津作品らしくない。彼のフィジカルと関西弁は実存そのものであり、他の小津作品に出てくる幽霊のような登場人物たちとは異なる。それ自体はとても魅力的なのだが、小津作品としての純度は下がる。家族がかつての愛人の家に上がる場面、あの部分はピリッとした緊張感がある。死は何の感傷ももたらさず、さっきまで生きて動いていた人間が物に変わるということを端的に描いたカット。そしてあの煙突から立ち上る煙、流れ橋。
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