滑頭

打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?の滑頭のレビュー・感想・評価

4.0
岩井俊二の出世作。
僕としては人生初・岩井俊二。
各所で名作とよく名前が出されてるので、いずれ観なければと思いながら、アニメ映画化決定の報を受けて鑑賞しました。

なるほど。アニメ化はすごい納得です。セリフや人物設定や映る情景が、アニメっぽい気がします。
多分、この感じは岩井俊二作品にずーっと貫かれてる部分なのかな、と他の作品を観ていないので予想にしか過ぎませんが。
現実を切り取ったような感じではなく、どこか、決して悪い意味ではなく、わざとらしさが感じられる。作られた劇であることが分かるというか。現実的ではなく、嘘っぽくて、でも映ってるものは現実の世界で現実の人間だから、そこに少し違和感が生じる。幻想感。
登場人物が、新海誠監督作品や細田守監督作品のキャラクターの感じに似てる気がする。年齢の割にませてるというか、背伸びしてる感じがあって、これは僕の個人的な感情かもしれないけど、見てて少し恥ずかしくなる感じ(笑)が、共通してる。ガキのくせに大人ぶりやがって!みたいな感じが、ちょっと恥ずかしいんだけど、見てる内にだんだん可愛く、愛おしく見えてくる。
男子たちは声変わりもする前で、背も低くてあどけない。対して奥菜恵は背も高くて大人っぽくて、同級生に見えない。ガキンチョな男子たちとは、全く違う世界に生きているかのような存在感で、結局誰の物にもならず透けて消えていってしまう。

舞台が田舎町で、何もない草むらや灯台や誰もいないプールなど、現実から隔絶されたような場所ばかり出てきて、大人もそんなに出てこない。子供たちだけの世界。そして確かに小学生の頃って自分にとって世界はこんな感じに見えていたかもしれないと思い出す。
なるほど確かにエモい。50分の中編だけど十分エモい。
最近観た映画だと、洋画の『アメリカン・スリープオーバー』、邦画の『14の夜』にも似た雰囲気。

スラムダンク、ファミコン、Jリーグ、とかは当時としては最新の流行だったのかもしれないけど、今観るとそれが逆にノスタルジック。
当時出会った人たちと、今出会う人たちでは見え方が違うのかもなあ。

一回曲がり角を曲がった奥菜恵が同じ画角のまま帰ってくるというカットとかも面白かった。

2017/02/17 @DVD
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