べ

打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?のべのレビュー・感想・評価

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少年少女の美しい青春群像劇。小学生特有の背伸び感やマセガキ感、観ていてどこかくすぐったい心地になる様な、懐かしさを感じる様な物語。
所謂「ループもの」の構成をとっているこの物語だが、このループを引き起こしているのはなずななのではないだろうか。この作品の原題は『少年たちは花火を横から見たかった』というものであり、これはループ前の祐介のみならず典道をも含んだ「少年たち」だろう。また、「下から見る」という行為はなずなと二人で見にいった場合、「横から見る」という行為は友達と見にいった場合をそれぞれ表しており、典道や祐介は横から見たかった(≒友達と見にいきたかった)のである。
物語内でもそうであったように、小学生にとって「好きな女の子と花火を見に行く」という行為はきわめてスキャンダラスなものである。また、恋愛と友情を天秤にかけた結果、まだ友情を優先してしまうというのも思春期突入したての少年ゆえであり、前述のマセガキ感を演出する一要素でもあるのかなと(笑)
上述の事項を踏まえると、やはり典道に好意を抱いていたなずながループを引き起こしたと考えられる訳であり、同時に主人公は平凡でヒロインに特殊な能力があるというセカイ系的な記号を見出すこともできる。
この物語をある種のセカイ系としてみる場合、それはきわめてミクロなセカイ系なのである。少女と天秤にかけられるのは世界や地球の滅亡ではなく、なずなの家庭や少年達同士の小さい繋がりなのだ。このミクロなセカイ系構造こそやはり小学生的な世界観のスケールの小ささの表れなのではないだろうか。
べ