シカク

過去のない男のシカクのレビュー・感想・評価

過去のない男(2002年製作の映画)
4.1
冒頭で医者の"安置所に連絡を、私は産科に回らねば"や救世軍のハンド演奏に"同じ曲ばかりで無く、違う曲もやった方がいい"とロック調のテンポのいい曲を提案して、それに聴き入る同じ境遇の人々、それから意地悪な警備員のハンニバルという名の飼い犬が全然凶暴じゃなかったりなど、時にちぐはぐでさりげないなユーモアが刺さった。
 
記憶喪失で自分が何者か、これからどう身を振ればいいのかと言う時に、手を差し伸べてくれる周りの人々と、アキ・カウリスマキのシニカルな社外風刺に人間の温かみをたくし込んで揉み染み渡せられる風合いに、「敗者3部作」のどの様な過酷な状況でも人には常に光があり、照らされることも、また自らが主人公のような憂き目に遭っている誰かを照らすこともあると語りかけられた。

監督が撮る港、工場の風景、室内の微妙な距離感で話している姿、登場人物達のドライで時にウェットな立ち振る舞い、全体的に流れるシュールさと同居する日常的現実感はことごとくアキ・カウリスマキ!!
大好きな監督!!
シカク

シカク