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上陸第一歩の大量の本のレビュー・感想・評価

上陸第一歩(1932年製作の映画)
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 ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督のサイレント映画『紐育の波止場』[1928]の翻案で、島津保次郎初のオール・トーキー映画。

 元ネタの作品は未見なので比較は難しいが、暗闇での格闘シーンなどはドイツ表現主義的だった。

 どちらかと言うと、パイプや帽子などの小物を映したショットを挿入するなど、モンタージュ理論の実践が色濃く目につき、蒸気船の煙突や甲板を繋いでいくシーンなどは『戦艦ポチョムキン』の影響を感じさせた。ストーリーにも若干の影響が見られ、主人公は貨物船の労働者で、一人の女性を巡って船長、クラブのオーナーらしき人物と対立している。主人公が敵対する人物を「ブルジョワ」と呼んでいることから、単なる女性関係のいざこざでありながら階級闘争の様相を呈している。

 中盤のシークエンスが部屋での会話だけで展開するため、かなり冗長に感じた。ありきたりなメロドラマなだけに、いくら台詞で情感を煽っても、ただただ長ったらしくなるだけだった。

 ラストシーンも同様で、説明的な台詞の白々しさと冗長さ、舌足らずな女優の語り全てが失敗だったと思う。

 今では顧みられない作品だとは思うが、それでも仕方ないなと思った。
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