青二歳

マザー 最後の少女イヴの青二歳のネタバレレビュー・内容・結末

マザー 最後の少女イヴ(1993年製作の映画)
1.5

このレビューはネタバレを含みます

エ、エコロジーアニメ……Filmarksにあるって事は劇場公開したの?!ふっ布教活動的な?((;゚Д゚)))コワっ
文明が自然を破壊した世界を舞台にして、自然を大切にねって話なのに、ラストがバルディオスとイデオン。そして2001年宇宙の旅。アカン、アカンよこれは。

90年代って公害問題から環境問題へフェーズが移った時代っぽい。子供だから記憶は定かでないけど少なくともドラえもんが説教臭くなりました。雲の王国で「みんな地球を大切にしようね!約束だよ」ってドラえもんが言うからリサイクルとかちゃんとやる良い子でした。ええ。
結構マメな方だったと思います。しかし大人になってエコと言われるものって場合によってはそれ意味なくね?とアホらしくなる事もあります。でも子供の頃の私は地球を大切にしなきゃならんのだと本気でかなり頑張っていました。今思えば「地球を大切に」は極めて傲慢なフレーズなんですけど。
さて閑話休題。"エコ"とは今もそこそこの付き合いをしてほどほどに暮らすわたくしですが、“エコロジーアニメ”という冠のついたアニメは流石に初めて観ました。まぁ、一時期のドラえもんみたいに説教台詞が織り込まれているんでしょうね…くらいに見始めたら…

…これはエコロジーじゃなくてカルトだ。自然賛美がそっちの方向行っちゃアカンだろう…60年代のヒッピーじゃないんだから。自然・地球と繋がる超能力…作者はインド帰りか。
主人公の少女が結跏趺坐するとかさ…仏教アニメなら構わないがなんなのこれ。オカルト趣味は悪く無いが、これはカルト。
エコロジーアニメと謳うだけあってまぁオーソドックスに説教くさいことは説教くさい。人間の物質文明・機械文明が愚かだというのはまだいい。精神文明を発達させられなかったというのも…まだ理解する。物質文明v.s.精神文明ね、はいはい、よくある構図ですよ。

で、なんで最後ああなるわけ。文明崩壊しちゃうのかよ!ドームシティとはいえそこにある惑星の自然や種は全滅かよ!…結構この時点で消耗。と思ったらまだ色々おかしい。イヴの父母の死の迎え方はひどいし…
みんな死んでバッドエンドかー( ꒪⌓꒪)と魂が抜けかけたところで、地上に残ったみんなの精神が身体から抜け出してイデオンのクライマックスに。もうつられて私の抜けかけた魂まで空高く飛翔していきましたよ…(꒪⌓꒪)
しかも最後がですよ!その火星からの集合精神体は地球に行って、クロマニヨン人を生んだっていうミラクルなモノリスですよ!
(意味が分からないと思いますが書いた通りなんですよ…!)

はぁ疲れた…要は、これ…90年代の新興宗教の隆盛に沿った話なんですね…物質文明の否定と精神文明への回顧、近代批判と前近代の再評価、科学に支えられたモノ溢れる消費社会を無価値とし自然回帰を謳う。

自分の立つ世界を振り返って批判的に生きるのはいいのだけど、自分の存在を否定するから良くない。
新興宗教の手口は自己否定から。
問題提起としては悪くないが、環境問題について触れる言説の中で一番アカンと思うのは人間の存在を悪だと断じること。環境問題はあくまで人間の営為によるものなのだから、断じるのではなく折り合いを見つけることが必要なはず。
そして悪である人間とは一線を画す超越者(このアニメでは神だが新興宗教でいうと指導者など)の存在が設定されてしまうと、もうそれは具体的な環境問題を解決するためのアクションは放棄され、精神論になってしまって、信仰や道義の追求にだけ向かうばかり。
さらに言えば、否定から始まるその手の宗教が行き着く先はカルト化、組織内の粛清、社会へのテロ。オウムの地下鉄無差別テロの2年前に公開されたものだと思えば、この作品はとても示唆的。93年といえば既に殺人を行なっている頃。

自分にとって90年代といえば、ドラえもんをはじめ色んなアニメで環境問題についての言説で溢れていた時代。そして大抵“人間が悪い”という前提だったし、そういう悪い人間になっちゃいけない!と子供たちに呼びかけていた。幼心に罪悪感を植え付けられたし、リサイクルどころか"ものを捨てる"こと自体も悪いことのように感じていた。一体あの“罪悪感”とはなんだったのか。“もったいない”というものへの愛着から生じる自然な罪悪感とは異なるものだった。社会世相を振り返るなら、それは新興宗教の隆盛と重なる言説でもあったのです…


ダメなことは山のようにあって書き切れないなのですが、一番は誰がターゲットなんだこれっていう。
環境問題をSFやファンタジーで攻めるのはアリだと思う。オカルトでもいいですとも。大抵説教くさくなるのも我慢しましょう。まぁスピリチュアリズムも我慢しよう…
だけど子供達にこれは1ミリも刺さらないよね?子供も皆んなが皆アニメ好きじゃないんですよ…アンパンマン、ドラえもん、ジブリみたいな絵柄ならともかく…こういうアニメちっくな絵柄が嫌いな子も一定数いるんです…
かといってオタク好みの絵柄でもない…まぁ強いていえば大友アニメあたりが大丈夫ならなんとか…?キャラデザは一応世界名作劇場の方なんですが…うーん…いや、大きなお友達も掬き切れないでしょう。

ストーリーの運びも到底一般受けはない。ファンタジー路線ならまだ寓話で収まったかもしれないが、かなりのSFだし設定もややこしい。精神世界に行ったり飛躍も多い。挙句ラストはSFというかオカルトというか…誰がついていけるんですか。エコロジーアニメとか謳うなら、もう少し間口を広くして下さい…
言っても詮無いけれど…そもそもオープニングに「すべての子供たちに捧ぐ」って言うからにはこんな宗教っぽいのはやめて下さい…大きいお友達を拾うならイデオンのパクリに努め、説教くさい台詞を省いて骨太のSFを頑張って下さい…

…とまれ、とても面白いものを見た。人生の75分を無駄にしてもよい方は、VHS処分市で出会ったら即買い案件です。
何がすごいって…監督は鈴木行(色んなアニメの監督・演出・絵コンテなどをやってる方。うる星やつらの演出とか、らんまの監督とか。)、脚本は吉川惣司(ボトムス)、キャラクターデザインは関修一(世界名作劇場)と…割にアニメ界の中堅(以上)が揃ってるって事ですよね…


オチとして書いちゃうと、原作者の二人は自然食品(?)と浄水器のネットワークビジネスの代表取締役でした。
あちゃー_( ┐ノε:)ノズコー
まぁ、無農薬主義も水道水否定派も個人の自由ですけどもネズミ講はなー( ̄▽ ̄)アハハ…す
青二歳

青二歳