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ブリキの太鼓のOMCのレビュー・感想・評価

ブリキの太鼓(1979年製作の映画)
3.6
3歳で成長を止めたオスカル君が見た、愚かな大人たちの物語。
1979年カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作。
オスカルの母親が生まれる所から始まって、彼が21歳になるまでの間の色んなエピソードが詰め込まれた感じ。大笑いしたり、ゾッとしたり、見ている方は忙しい。でも一貫しているのは、大人たちの愚行への批判的な眼差し。それは、身近な母親の不貞行為はもちろんのこと、プロパガンダによって隣国を侵略する独裁者、そしてそれに翻弄される市民たちと、あらゆる方面に向けられる。子供の視点で描くことで、大人の理不尽さ、矛盾、不誠実さがより際立つだけじゃなくて、愚かで不器用な大人たちが愛おしくもなってくる。
自分のことを振り返ると、時々思うことがある。子供の頃から何が変わったんだろうと。さすがに3歳の頃は覚えてないけど、小中学生のころから中身は変わってないんじゃないだろうか。長い年月をかけて、大人のふりをしたり、邪悪な気持ちを隠したりするテクニックを身につけただけのような気がする。そのメッキが剥がれることに不安を感じる。認知症を患うと幼児退行を発症することがあると聞くけど、そんなのホラーより怖いw アー恥ずかしい(その時は自分でもその無様な姿を認識できないと思いますがw)
オスカルは外見は子供だけど中身は成長して、当然恋もする。でもあのベッドシーンはさすがにギョッとした。今なら倫理的にアウトですよね。
なんか可笑しくて笑いが込み上げるシーンがてんこ盛りだけど、時々ゾッとして背筋が冷たくなる。そんな映画でした。
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