半兵衛

光に叛く者の半兵衛のレビュー・感想・評価

光に叛く者(1931年製作の映画)
3.3
過失の罪で10年という長期の刑をくらった青年の絶望を象徴する牢内の深い闇や『恨み節』と呼ばれる不満があるたび囚人たちが叫ぶブーイングなど刑務所の様子を細かく描いたディテールはとても90年前とは思えない出来映えで今でも観客の心に刺さる。

終盤の脱獄を密告した男を殺害した囚人を所長に告げ口するかそれとも囚人仲間を守るか主人公が葛藤するドラマは緊張感がある展開でハラハラするが、だからこそ主人公の青年が再起するラストの甘さが残念に思えてくる。確かにヒューマニズムと娯楽を心情とするホークス監督の作風らしいけど、後年の刑務所ドラマでは考えられないオチの緩さにびっくり。

不気味な存在感と囚人への義理を通す主人公に感銘を受けて行動する男気を両立させる囚人仲間のボリス・カーロフの熱演の素晴らしさが作品のグレードを高める。

冒頭ポーカーをして勝った取り分をめぐって争っていた刑事二人組が、シーンが変わってもずっとその事で揉めているのがホークスらしい。
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