似太郎

海を飛ぶ夢の似太郎のレビュー・感想・評価

海を飛ぶ夢(2004年製作の映画)
4.2
【生きる為に死にたい】

尊厳死をテーマとした重厚な人間ドラマ。主演のハビエル・バルデムが一人孤立し、周囲に見守れながら命を落とす航海士ラモンを好演する。原作はラモン・サンペドロの手記より。ほぼノンフィクション。

家族が皆、ラモンのことが好きなのでどうしても引き止めようとする。ラモンの周囲で彼を説得する女優陣がとても魅力的に描かれていた。本来の「生」を獲得する為に敢えて自ら「死」を選択するという究極のエクスタシー(浄化)が描かれた作品でもある。

広大な海🏖へ飛んでいくラモンの夢のシーンが魔術的な美しさを放つ。生命の源である海へ旅立つラストシーンが、もはや「死」をも超越した永遠の航海なのである。人間の自由と尊厳について改めて考えさせられる作品だった。

主演したハビエル・バルデムが驚異的な名演技を披露している。不思議と清涼感の漂う秀作。
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