実在の人物の映像化は敬意を払ってどうしても美談になりがちだが、これは絶望的だ。
何しろ唯一自由が利くのが左目のみという状況。
この左目のみを使って自伝を出版させたジャン・ドミニク。
タイトルは彼の本の題名だが、これが何を意味するかは徐々に分かる。
撮影方法や演出が非常に斬新で驚く。
最初の30分ぐらいはやたらと窮屈に感じる重苦しさ。ジャンの窮屈さを見てるこちらが感じるかのような状態。
死にたいと漏らす苦言は間違いなく本音。
だがカメラが変わった後の高揚感は実にすごい。
左目意外に自由なものが2つあり、記憶と想像力。
この部分が映画としての広がりを感じてしまう。
マチュー・アマルリックがこれ以上ないほど難しい役柄をこなしており、新たな性格俳優の誕生かと。
この映画を観て思い出すのは『海を飛ぶ夢』でのアプローチと同じ方法だということ。
だが変に悲観的にせずにそこはかとなくユーモアを漂わせたジュナーベルの演出はお見事です。