はなむしはがね

プライド 栄光への絆のはなむしはがねのネタバレレビュー・内容・結末

プライド 栄光への絆(2004年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

父親が地元のヒーローだったTB、恵まれた体を持ったが怪我で夢を諦めるしか無いRB、その控えで能力は高いはずなのに小心者のRB、母親の病気のために勝たなければいけないQB、デカイが大人しいDE、というような様々な少年の心を描く。
約二時間という枠では消化不足か。調べてみるとやはり原作小説がある(ドラマもある?)。試合の省略は結構良い。
優勝はできなかったものの父親は息子に自分の優勝の証を授ける。息子がこれから現実に屈さずに生きていくためのイコンである。
NFLという輝きの未来でなく、カレッジボウルでも無いハイスクールフットボールの青春、未来から見た栄光。これは未来への希望ではなく未来のための栄光なのである。昔はヒーローだった父親は普通の職業についているのだろう。しかし彼はハイスクール時代のフットボールの優勝の証である指輪を文字通り、過去の栄光として身につけている。過去の栄光に支えられて彼は社会という辛い現実を生きているのだ。息子がそれを必死に探したのはそれのためだ。指輪は父親のアイデンティティそのものなのだ。
父親はNFLを目指したわけでは無いのだろう。息子にもその能力がないと思っているはずだ。そんな子どもに17の時だけは夢を見て欲しかったのだろう。これから先も社会の苦しさを耐えるための栄光の青春を送って欲しかったのだ。彼らは救われたのだコーチの”be perfect”という言葉に。確かに彼らは負けてしまった。しかしやりきった。そういう気持ちさえあればそれは”perfect”なのだ、とそれを象徴するシーンが父親との和解のシーンなのである。しかしこれは強いチームだからこそ言える話であって弱いチームがやりきったからperfectなのかと言えばそうではない。この映画に出てきたチームは強いチームだからこそperfectという言葉が似合うのだろう。
アメリカンフットボールという競技はアメリカン・ドリーム的要素を多く含んだスポーツである。NFLでQBとして試合に出れば1試合で5000万円稼げる。これはこの物語に出てきた大人たちの一年の給与のどれよりも大きいはずだ。この物語は、その夢と社会の現実の狭間で生きる17歳の少年たちの物語なのだ。