黒旗

トラ・トラ・トラ!の黒旗のレビュー・感想・評価

トラ・トラ・トラ!(1970年製作の映画)
4.0
両国で別々に互いのパートを製作した合作。数々の暗礁に乗り上げながらも、その製作方針が貫かれたことに最大の賛辞をあげたい。当初、黒澤監督が手がけた日本サイドのシナリオは内情的側面、また感情面においても映画では最も真実に近いものだろう。米国側も奇襲を薄々察知しながら、巨大化複雑化された組織図に阻まれ危機感の浸透に時間がかかった経緯を克明に描いている。外交問題から三国同盟、相手国の軍事力を十分警戒していればこその周到な計画立案・演習。時系列に組み込まれた瞬間が恐ろしいほど自然に刻まれ、緊張が高まっていく。史上最高の巨額を投じた奇襲描写も鮮烈で凄まじく、零式と迎撃機の空中戦シーンにも時間がかけられ…これだけの物を作り公開するのに何も起きない訳がない。製作中や外野で起きたトラブル・騒動は、あって当然の出来事だったように思う。米国での興行成績が日本ほど振るわなかったり批判が出たのも頷ける。日米開戦史・WW2を描いた最高傑作の一つとして最近は一様に評価が高いようだが戦時の記憶は薄らいでいる。もうこんな作品は出てこないだろう。これほどまでにこの戦争を理解させてくれた本作には個人的に感謝。山本大将の最後の台詞「眠れる獅子を…」これ、日本のやっちまった感すげーな
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