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憎しみのSNのレビュー・感想・評価

憎しみ(1995年製作の映画)
4.2
熱量と疾走感はすごい。細かく割ったカットも、常に複数の人間が画角に収まる構図に馴染んでいる。ただし、同時並行で何人も話すシーンが多くて、聞き取りにくい箇所は多々ある。
パリのシーン。美術展の懇談会からles banlieues(スラム野郎)と老人に罵られ、外に追い出される。彼らが話すargot(スラング)に満ちた言葉遣いからも、彼らが招かれざる客であることは容易に判断がつく。だが、粗雑な彼らの言葉に耳を傾けてみると、監督が仕掛けたいくつもの言葉遊びの存在に気がつく。
まずは、表題にもなったLa haine。物語の中盤で、La haine attire la haine(憎しみが憎しみを招く)という印象的なフレーズが頭の片隅にこびりついていたならば、後半の(特に、ラストの前、ユベール・クンデがヴァンサン・カッセルに向かって、どうせ引き金を引けないんだ!という箇所)一連のシーンにおけるtire!(引き金引いてみろよ!)という熱のこもった台詞により深みを与える。
前半から何度も反復される飛び降りの台詞にも仕掛けがあって、最後のポリ公に捕まり、モノローグのように流れる台詞の中にpas la chute(落下ではなく)、l’atterrissage (着陸)うんたらという箇所は、どことなくparachute (パラシュート)のイメージを誘発し、世の中に牙を剥きながらもどこか寂しげで、つねに助けを求めている若者たちの悲痛な叫びを喚起せざるをえない。
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