罪と罰とストックホルムシンドローム
僕ね、ロードムービー、好きなんです。
現実から抜け出したような感覚になれて、旅に行っている気になれる。
それで、結構いろんなの見て来たんですけど、この作品はちょっと異色です。
だって、死体と旅をするんですから。
誤って人を殺してしまった男。
その男に殺された者。
殺された者の親友。
この3人がメキシコのヒメネスという場所を目指して旅します。
この組み合わせがとてもシュールで、当人たちはいたって真剣なんですが、なぜか笑えてしまう。
死体と旅するってのがどうもつぼなんですよ。
段々腐っていくし。
旅と言ってしまえば聞こえはいいですが、殺人を犯した男は強制的に連れ廻されてしまいます。ほぼ誘拐でした。
その男をバリー・ペッパーが演じている。
プライベートライアンで狙撃手を演じた人ですね。
クールな雰囲気とは対照的な熱のこもった演技がとても良かった。
変態っぽい感じも出ててそのギャップが最高です。
そして、彼を連れ廻すのがトミー・リー・ジョーンズ。
渋いです。
そして義理固いんですね。
この人は、映画の中での自分の見せ方をしっかり心得ている感じがします。
とっても彼に相応しい役柄。
この二人が死体を担いで旅をするわけです。
旅の目的は死んじゃったやつの遺言なんですね。
「ヒメネスに埋めてほしい」
これを親友がどうにかして叶えてあげようとするわけ。
そして、それを殺してしまった本人にやらせようとするんですね。
なんだかここに、人が罪を償うということの根源的な部分を感じてしまいます。
太古の人間も人が罪を償うということに対して試行錯誤をしてきたんでしょう。
今の社会ではそれがシステム化されていて効率的なんですよ、昔と比べてね。
でこの映画では、そのシステムや効率云々なぞで罪が償えるのかよって突っ込みをいれているわけです。
違った方法があるはずだって。
ただ、その方法論はとても乱暴で強引なんですね。
でもそうでなかったらあのラストには結び付かないと思います。
メルキアデス・エストラーダの最後の望みは叶えられたのか。
人間の面白いところが沢山つまっているそんなラスト。必見です。
ふとしたことからいろいろ考えを巡らせてしまう。
そんな映画ってなんだかとても贅沢なものです。