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コールド マウンテンのEditingTellUsのレビュー・感想・評価

コールド マウンテン(2003年製作の映画)
4.0
January 30th

Anthony Minghella監督作品。
Walter Murch編集。
Walter Murch先生が、デジタルに手を出して作り上げた作品。デジタル作品でどの点が編集においていいのか。それはノンリニアであるという点。だから、細かなタイミングをいろいろ調整しながらできるし、テイストを揃えるために、全体をガラッと変えることもできる。

その典型がこの作品だろう。Jude Law演じるInmanとNicole Kidman演じるAdaの二人の地理的距離感と、心理的距離感、時間的距離感が編集で操作されている。出会うシーンから恋に落ちるシーンまでは全くロマンチックさもないのだが、そこから戦地に向かい、脱走し、義勇隊から逃げ惑い、恋人に会うために帰ってくるのを2時間34分かけて描くというのがすごい。ほとんど、二人が同時にショット内に入るシーンは少ないし、なんで恋に落ちたのかも謎、ましてや、南北戦争のシーンは最初だけ。それでも、ここまで二人を応援したくなるのは何故なのか。

もうこれは、チートです。編集で、Inmanの戦場、脱走のシーンと、Adaの農場のシーンが行ったり来たりするのですが、その時間軸が並行しているとは限らない。が、まるで並行しているかのように、手紙という一つの繋がりだけを使って、感情の起伏、起こる出来事と、自分の成長、相手への思いが密接にリンクして映画が進んでいく。これは、小説の中ではやりやすいことだが、映画となると、視聴者を混乱させてしまうことが多い。だから、あんまりおんなじ場所をいったりきたりするのは良くないとされている。ルールは破るためにある。Walter Murch先生のためにあるような言葉、ストーリーを伝えるという点は確実に死守しながら新たなことにどんどんチャレンジしていくのが、かっこいい。最初はディゾルブを使ってゆったりとしたテンポでスタートし、Inmanの脱走とAdaがRuby(Renée Zellweger)と出会って農場を作り上げ、周囲の人間に関わっていく過程で、それぞれの成長、心理的距離感の変化がじっくり描かれ、冬になってCold Mountainで終劇を迎える。

細かいところから、大きな枠組みまで編集が光る作品じゃないかなと思います。突き詰めればまだまだ深い。
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