タミオカ

いのちの子どものタミオカのレビュー・感想・評価

いのちの子ども(2010年製作の映画)
4.0
対立が続くイスラエルとパレスチナ。しかし一人の赤ん坊が救いの手を必要としたとき、人々は立ち上がった!

感動話と見せかけて、これがヤバいドキュメンタリー映画だった。

主人公は母親だ。健気に子供を救おうとする母親とは一味違う。
治療を受けるための支援をしてくれる寄付者の素性を知ったときのあの反応よ。

「へぇ、変な人ね」

そこからどんどん母親の頭の中が明らかになっていく。
監督から民族対立の話題を振られたときのやり取りはスゴい。ここの「あ、なんか今すごいものを見た」という感覚はドキュメンタリーならでは。

しかしさらに観ていくと、彼女が達観したような態度を取るのは生まれもっての環境と辛い経験、そして教え込まれた宗教による影響だと分かる。

パレスチナの惨状は劇中でも描かれている。その容赦なさには自分も「命は軽い。その考え必要かもな」と思わされるほどだった。

まぁ観ていて辛い映画なのだけど、実は母親が"達観しきれていない"というのがミソになっている。
彼女の言動の端々に矛盾がちらつく。普通ならイライラするところだけれど、本作ではそこにどうしようもなく希望を感じずにはいられなかった。

そして映画を〆る母親のあの台詞よ。
また矛盾してるよ、この人。でもそうだね。俺もそう思うよ。

Netflixでは4/9までで一旦配信終了予定。
タミオカ

タミオカ