シカク

スモークのシカクのレビュー・感想・評価

スモーク(1995年製作の映画)
4.5
ブルックリンのノスタルジックな街並みをバックに、煙草吸いながら洒脱に語られる。
ほら吹き話と紙一重のアクのある会話が、煙と共に吐き出され揺れ漂う、そして耳を傾ける。
「世界の片隅に過ぎんが いろんなことが起こる」 
無数に通り過ぎる人々、その一人一人が過去現在未来に何かしらの傷を抱えている。 
その傷を少しでも紛らわせ、癒すきっかけがラストの原題「オーギー・レーンのクリスマス・ストーリー」の件に集約されている様な気がします。
モノクロのシーンは冒頭ポールが語っていた、煙の重さについての話を彷彿させ、聞き手にとっては嘘とも誠ともつかない話に実体的に質感や匂いが宿され手に触れられるよう。ポールの返しの澱みなく受け入れ悟るような肯定の「君は本当にいいことをしたな」という言葉が、しがない日々の退屈な時を少し上向かせ何かを信じられる素晴らしさを感じた。

行く日も行く日も撮り溜めた同じ場所同じ時間の4000枚もの写真が、想像力を掻き立て、すれ違い、時に交差しそこで反応し合う人間模様を俯瞰で眺め心が温もりに包まれた。

これでも十分ではあったけれど、物語に深く浸れる良さを感じたので、そこにもう少しだけ居たかった浸かりたかったという寂しさを覚えた。
でも作品としては想像の余地を与えるのを、見事に成功している。ハーヴェイ・カイテルが渋くて恰好良い本作は、ヒューマンドラマ映画の紛れもない傑作だと思います。
シカク

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