Tomoaki_ENDO

ダークナイトのTomoaki_ENDOのレビュー・感想・評価

ダークナイト(2008年製作の映画)
5.0
映像が放つ圧倒的なインパクトと、全編通して一切の面白味を失わない物語の構成力が光る名作である。実写撮影にこだわった迫力のチェイスシーンもさることながら、劇映画初使用となったIMAXカメラでの映像は、それだけで他の作品との違いを実感させる。作品の内容については特に終盤の展開が凄まじい。クライマックスに次ぐクライマックスという感じでら派手さと重さが絶妙なバランスで混じり合っているゆえに、152分は(鑑賞回数が二桁に乗るまでは)長く感じなかった。

そうして観客をエンターテイメントの渦に巻き込みながらも、哲学的な問いかけが成されているのが、本作の大きな魅力の一つだと思う。何をもって善なのか悪なのか、人間の心の弱さと限界を余すとこなく描いている。そこに説得力を持たせる意味でもヒース・レジャーのジョーカーが素晴らしい。存在感が圧倒的過ぎる。言葉づかいや仕草の一つ一つからカオスが滲み出ており、時折見せる鬼気迫る表情と相まって、実社会に通ずる混沌の倫理を際立たせている。

ただ、実のところは上質な(ダーク)ヒーロー映画になっているというのが全てだと思う。バットマンは、いかに無秩序な“闇”が世界を支配しようとも、ただひたすらに(強引に)“光”を追い求めていく。決して諦めない姿勢にグッとくるとの同時に、作中の混沌とした世界が実社会とリンクし過ぎていることを踏まえると、我々観客にもバットマンの意志が求められていることは間違いない。それを感じ取った時に高揚感に包まれた感じがした。
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