えいこ

ダークナイトのえいこのレビュー・感想・評価

ダークナイト(2008年製作の映画)
4.0
ティム・バートンの「バットマン」とは全く違うジャンルの映画。解釈や演出のスタンスが異なるので単純に比較はできないが、技術の進歩が映像に表れている。とにかく、ゴッサムシティが美しい。カメラワーク、構図、ライティング、音楽、全てが計算されて美しいため、ジョーカーの悪業からも何とか目を背けずにいられる。

警察とマフィアの組織、ブルースとハービーの関係、コインの裏表のように、光と闇、敵と味方、信頼と裏切り、正義と悪が入れ替わる。そして、誰にとっての正義を選ぶか、ひとりか大勢か、〝善良な〟市民か囚人か…。ジョーカーは、本性の奥底の悪をあぶり出す究極の選択を次々と突きつけてくる。命の危機が迫る時に、果たして私たちは悪に堕ちずに、公平や正義を保ち続けることができるのか。ブルースやゴードンだけでなく、私たちもヒリヒリと揺れる。

ゴッサムシティが、リアルな都会として描かれているだけに、ジョーカーの存在がより現実味を帯びてくる。世界が燃えるのを見て喜ぶ人間に理性で向き合うのは不可能。不満の暴発と理不尽な暴力が際限なく連鎖していくのは現代そのものである。

有り余る富を武器に手前勝手な自警活動をするバットマンも、孤独で苦悩する存在であり、完全なるヒーローではない。ジョーカーはそんな心の隙をつく。ヒース・レジャーのジョーカーは、演技も言葉も深いところにぐいぐい刺さってくる。
フェリーのシーンは少しだけ救われた。
えいこ

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