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ダークナイトのAKのレビュー・感想・評価

ダークナイト(2008年製作の映画)
4.9
参考記事: 東浩紀「緊急事態に人間を家畜のように監視する生権力が各国でまかり通っている」
https://dot.asahi.com/aera/2020041500029.html?page=1

バットマンはジョーカーを捉えるためにゴッサム中の携帯電話を盗聴する。緊急事態でありながらも、フリーマンはこれが倫理と人道に反する管理であると激怒し、ジョーカー捕縛後にこのシステムを破壊した。この超特大ヒット映画から、まだわずか12年だ。

「3000万人のプライバシーを侵害すれば凶悪犯罪を防げます。さぁあなたはどうしますか?」という、思考ゲームとしての2008年のフィクションの想像力だったのだが、2020年にもし『ダークナイト』が作られるなら、全く無駄なシークエンスであるとしてカットされるだろう。もはや監視は前提でさえある。

で、ここから先が研究者としての興味関心。そもそも『ダークナイト』って、「このボタンを押せばこのフェリーは助かりますが、もう一つのフェリーは吹き飛びます。押しますか?」や「デントとレイチェルどちらかしか助けられません、どちらを選びますか?」という、二者択一の判断を迫るものだった。でこれってようは「トロッコ問題」なんだよね。『ダークナイト』公開翌年の2009年に『これからの正義の話をしよう』が世に出てマイケル・サンデルが時の人になったのは必然である。で、あの時のサンデル・ブームに皆踊らされた(俺も踊った)けど、「トロッコ問題」ってやっぱり酷い思考ゲームじゃん?

「お前は死刑に反対なのか?じゃあお前の最愛の人が殺されたとしても死刑を望むなよ?」という、超極端な例を提示してそれを一般化して問を迫る。回答者はすでに質問者に喉をつかまれている。だから、正しいトロッコ問題への返答は「その汚い手をどけろ」なわけだけど、ここから翻って『ダークナイト』のことやイラクや911を考えるのは、論文上でにするぜ!論文を書くぜ!
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