うなぎ

ダークナイトのうなぎのレビュー・感想・評価

ダークナイト(2008年製作の映画)
5.0
池袋のクソデカIMAXで鑑賞!1.43:1になると壁一面が映像になり、黒いスクリーンすら見えなくなる。私は最前で見たため、映像以外のものは皆無、という体験をすることができた(やや見上げる形にはなったが)。
この画角で見るアクションは他の映画とケタが違う。今まで微妙だと思っていた香港のシーンもカッコよく見えた。

今回個人的に注目したのが、「混沌の本質は公平」というセリフである。トゥーフェイスとなったデントのセリフだ。しかし、ジョーカーの行う悪もこれに準じている。
判事や市長など、たくさんの護衛に守られる人をいとも簡単に殺す。一般市民と囚人を互いに殺せる状況にする。
このように、普段死を意識しない人々に対し、死が誰にでも公平に訪れることを示す。そこから産まれる恐怖は人を悪へと突き落とす。これがジョーカーのポリシーだ。

これは9.11の社会、つまり世界中のどこが戦場になるか分からなくなった現代につながる。この恐怖はアメリカをイラク戦争という悪の道へ誘った。

日本においても、「無差別殺人」が最も恐ろしい悪になりつつある。1995年の地下鉄サリン事件に始まり、2008年の秋葉原通り魔事件、2019年の川崎通り魔事件、京アニ放火事件など、多数の無差別殺人が起こっている。また、動機も時代を経るにつれて不鮮明になっており、どんな理由で恨まれ、殺されてしまうか分からなくなっている。まさに公平によるカオスである。

犯人の多くは、学生時代は普通の人だったようだ。まるでジョーカーが善良な市民を悪へ落とすように、私たちの誰もが加害者になる可能性があるということである。(昨年公開の「ジョーカー」はまさにその事を描いた映画である)

この現代の圧倒的な不安に対し、私たちはどう立ち向かうべきなのか。この映画では「ダークナイト(闇の騎士)という解答が示された。デントがトゥーフェイスになった事、つまりどんな正義も簡単に悪に堕ちるという事実を伏せ、悪名を背負いながら正義を貫く、ということである。簡単に言い換えて仕舞えば、エリート主義である。

誰でも簡単に悪になること。それはかなりの恐怖である。しかしそれに屈せず、正義を貫いていく信念を持つ。私の乏しい理解力では、このレベルが限界だ。世界に向けてどのようなアクションを行えば良いか、という事までは持ち帰ることが出来なかった。
しかし、ジョーカーが常に自分を悪に落とそうとしていること。これを意識して過ごしていきたい、と強く思った。
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