イチロヲ

いけにえ天使のイチロヲのレビュー・感想・評価

いけにえ天使(1988年製作の映画)
3.0
上流階級の令嬢(桂木麻也子)を誘拐した青年(池田光隆)が、次第に彼女のもつ特殊な境遇に同調していく。人間の愛情を信用することができない、虚ろな男女の慰め合いを描いている、日活ロマンポルノ。

「身体と精神が分離した状態の性観念」「男の人生を破綻させてしまう魔性の女の葛藤」という、ロマンポルノの定石を盛り込んでいる作品。アダルトビデオ黎明期のAV女優、桂木麻也子が本作にて劇映画デビュー。令嬢の義母役を志麻いづみが好演している。

藤井克彦特有の幻想的な絵作りが活用されているが、出涸らしのモチーフを無難な演出で淡々と語っているだけなので、良くも悪くもシンプルかつミニマム。犯罪行為とは別次元の世界へと転移していく感覚が、あまり伝わってこない。

本作封切りの5ヶ月後に、プログラム・ピクチャー(新作映画の量産体制)としてのロマンポルノが終了する。すでに出玉がなくなった頃の、最後の足掻きを痛感させられる。
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